トップページ武田倫子の 「行った・見た・聴いた」作曲家アルバン・ベルク1/2

作曲家アルバン・ベルク1/2

 「現代曲」と聞いただけで拒否反応を起こす輩もいるが、この曲はどうだろう?アルバン・ベルク「ヴァイオリン協奏曲」。今月19日、話題の指揮者アーノンクールで聴ける。同曲は4年前ケント・ナガノもその指揮で冴えを見せた。2月9日はベルクの誕生日。

 建築家グロピウスと再婚したマーラー夫人アルマの子マノンは18才で死んでしまった。作曲依頼はヴァイオリニストのクラースナーからで、マノンと親しかったベルクにより『ある天使の思い出に』と捧げられる。7年越しのオペラ「ルル」と平行し、集中して短期間で作曲された。土地の民謡の旋律やバッハのコラールも導入し、12音技法を見事に融合した形で書かれ、透明なリリシズムに満ちている。心の裏側からささやきかけるようなメロディに魅き込まれてゆく。死の5ヶ月前に完成。自身の生死をも超えた厳粛さが感じられる。

作曲の館はどこでもその人以上に物語るものがあるが、夏のある日、この2作品が創られた『森の館』を訪れた。ケルンテン州フェルデンより自転車でヴェルター湖畔を走ること約50分。小鳥さえずる坂の上の別荘だった。日時を予約してあった管理人さんが鍵で開けてくれる。入った瞬間《芸術の気》とでも呼ぼうか・・・、この妖艶な作曲家の魂に触れられた思いがした。

 オーストリア人には知られているが、美しいベルク夫人は、かのF・ヨーゼフ皇帝とアンナ・ナホフスキーとの間に生まれた子であった。この経緯の苦悩はアンナの日記の形で本(絶版)に登場し、息をもつかせぬほどのリアリティに溢れている。−私は昔13区の旧ナホフスキー館Uに下宿していたことがあった−この近くでオペラ史上大改革と言われている「ヴォツェック」が書かれ、ベルク夫人は晩年をそこで迎えている。孤独で鳥籠の鳥たちを相手に暮らしていたという。

 現代曲の上手い歌手アンニャ・シリヤは言っている−「ベルクの作品を自分はロマン的なものと解釈している」と。世にはいろいろな《音》があり表現方法がある。それをどう受け止めるかかは個人の自由であり、生き方にもよるけれど、歌謡曲でもポップスでもクラシックでも何でもいい、先入観にとらわれず自分で選べる耳と柔軟な心を持ちたいものだ。

2003年2月たけだのりこ